THE VALUE OF CELS

セル画の価値

「セル画」は、第2の「浮世絵」?


日本文化を代表する芸術の1つ「浮世絵」と、日本アニメを育ててきた「セル画」には、実は共通点があるのです。まず1つ目は、表現技法。輪郭線で描き、その中をパーツごとに配色して平らに塗り、それらを層として重ねて1枚の画にしています。日本のセル画アニメが独自の進化を遂げることができたのは、浮世絵にも通ずる日本文化の中に受け継がれてきた芸術的感性が息づいているからとも言えるでしょう。

しかしその一方で、悲しい共通点もあります。浮世絵は当時の日本ではそば1杯と同じくらいの安価で売買されており、粗末な扱いを受けていました。ところが海外の貿易商人や画家たちは、浮世絵の芸術的価値を評価して高値で取引きするようになり、浮世絵は次々と海外流出。セル画にも今、同じことが起きようとしています。

成長する「セル画市場」。
1点で数千万円の価値がつく作品も!


ひと昔前までは、完成したアニメ作品に使用されていたセル画は「創造過程の産物」でしかなく、その多くが廃棄されていました。日本においてセル画は、それ自体に価値を見出されずにきましたが、今これが劇的に変わりつつあります。

2000年にフランスのルーブル美術館が、アニメのセル画を芸術として認めました。そこからセル画は芸術的価値を持った「投資対象」として活発に取引きされるようになり、1点数千万円の価格がつくものもあるほどです。さらに現代のデジタル技術が追い風となり、セル画をNFT化して販売するプラットフォームが誕生したことで、世界中の投資家の人々から注目を集め、大きな市場へと成長し始めています。

セル画は、すべて
「実体のある1点もの」。


セル画は、職人によって1枚1枚、絵具と筆で塗られています。ただの作業ではなく、「作品をつくっている」という意識で、愛情を込めて高度な手仕事が行われているのです。2003年にセル画がアニメの制作現場から消えてしまったことで、日本アニメの成長を支えたこの技術も、セル画も、すでに貴重なものとなっています。

また、「実際に放送に使われていた」ということもセル画が持つ特別な価値の1つです。普段は画面上でしか見ることができないアニメという「作品の一部」を、デジタル上ではなく、現物で見ることができる。自分の手で触れることもできる。これからの時代において、“モノという実体”がある1点ものの価値は計り知れないものです。そうした点も含めて、セル画によって「日本のアニメという芸術の一部を所持できる」ということが世界の人々にとって大きな魅力となっています。